「社会情動的スキル」

長い夏休みが終わり、子どもたちは口々に「恐竜見たよ」「イルカ触った」「おばあちゃんと遊んだ」「飛行機乗った」・・と、夏の思い出を話してくれました。
工事の関係で、長い夏休みになりご迷惑をおかけしました。「費用が安くなってから旅行に行けたからよかったわ」と言って下さる保護者の方もいましたが、「夏休みに入って3日目からずっと、幼稚園行きたいって言ってましたぁ・・」という保護者の方もいて、長い休みの間、大変だったこととお察しします。
我が子が小学生の時は、夏にしかできない「自由研究」の宿題を子どもと一緒に考えるのが好きでした。自分の身の回りの不思議を調べたり、足を運んで話を聞いて、写真と共に記録したり、自分なりの考えをまとめて考察を書く仕上げを見守りながら、問題集よりもこんな自主的な学びの方が、子どもの力をうんと伸ばしてくれるような気がしていました。
幼稚園では、カーニバルが終わる頃から年長組の子どもたちがお店屋さんごっこに取り組みます。何のお店にするか話し合うところから、何の素材を使ってどんな形に 作るか考え話し合い、うまくいくように試行錯誤を繰り返し、失敗を乗り越えて、お店をオープンさせます。運営がうまくいかないとまた話し合い、役割を自分たちで決めていきます。主体的に生き生きと活動する中で育つ力が素晴らしくて、いつも人に伝えたい気持ちでいっぱいになります。
そんなお店屋さんの取り組みで育つ様々な力が、今、OECDで幼児期から育てることが大切だと提唱されている「社会情動的スキル」にぴったり当てはまるのではないかと思いました。そして、去年の年長の担任たちと、場面ごとの子どもの育ちを検証してみました。子どもたちの会話の一つ一つからその思いや力を丁寧に追うことで、子どもたちの育とうとしている力が浮き上がってきます。そんな思いを知ることで、見通しを持つことができ、子どもの育ちを待ちたい気持ちになりました。
そして、8 月に福島での「日本幼児教育実践学会」で発表してきました。「こんな楽しそうなお店屋さんごっこを見たのは初めてです」「子どもの育つ力を言語化することでわかりやすい」と高評をいただきました。又、その他、園内研修でも、先生たちみんなで子どもの育ちを語り合い、暑い夏を終えました。
実りの2学期に備えて準備オッケーです!!今学期も宜しくお願いします。

「向き合う」

いよいよ夏休みに入ります。いつもより子どもと過ごす時間が長い分、どこに連れて行こうかなぁ、何をしようかなぁ、楽しみなような、ちょっとめんどくさいような・・・そんな気分の日もありますよね。
「この子の人生の中で、この一瞬はもう二度と来ないんだ。」と、子どもを育てていときにふと思ったりしました。親が子どもと一緒にいられる年月は限られてて、大人になって自分の力で生きていく年月のほうがずっと長いですよね。その長い月日を、小さいころに親にもらった愛情と、親と経験して貯め込んだ感性を食べながら生きていく・・・そんな風に思うと、一緒にいることのできる短い月日を密度の濃い時間にしたいと思ったりしますね。
でも特別なことをしなくても大丈夫。夏休みは、いつもよりたっぷり時間がある分、その時間を親子で向き合って楽しむことが、目に見えない心を豊かに育てることになります。わたしたちがよく言う「心を育てる」というのは、社会情動的スキル(不思 議だな、なぜ?やってみたい、おもしろそう、がんばろう、試してみよう、悲しそう、 困っていないかな・・・など)の様々な心の動きをたくさん経験し、また共感してもらうことによって育ちます。そして、学ぶ力はその社会情動的スキルと共に育つと言われています。
年長組が7月15日から一泊二日で、能勢にお泊り保育に出かけます。能勢の古い民家に泊まります。土間や縁側があるような日本家屋です。そして、近くの山や川に行って自然と触れ合います。子どもたちにとっては寂しがる暇がないほど刺激にあふれた2日間です。山や川で目に入る風景の不思議に気づくためのしかけや関わりがあったり、少しの「できるかなあ」にチャレンジしたり、見つけたことをみんなで教えあったり、共有したりします。自然の中での危険性や管理が難しいことでレジャーランド等での宿泊保育にするところもあるようですが、自然の中で子どもの感性を育て ることがその後の人生の大きな力になると思えば少しの労力も惜しくはないですね。
私たち職員は夏休みに様々な研修会に行きます。そして今年も「日本幼児教育実践学会」で実践発表をします。自分たちの学びの機会でもありますが、子どもたちの幸せな育ちのためにみんなで語り合う暑い夏にしたいと思っています。 皆様も健康に気を付けて、充実した夏をお過ごしください。

「答えは子どもの中に」

6月に入り、15クラスのクラス懇談が終わりました。お母様同士の話し合いの中で悩んでいることの答えが見つかったり、おもしろいアドバイスをもらって笑ったり・・・楽しそうなお母様方を見て、私もママ友にたくさん助けてもらったのを思い出しました。育児書に書いてあることより、先輩ママの体験談の方が生々しくて参考になったりしますよね。
子育ては正解が見つかりにくいものです。場合によってはなかったりして・・・。いろいろ試しているうちに解決したりします。困ったことがあると、どうしようか子どもの様子をよく見ますよね。どうやって関わろうか考えたりしますよね。それは「答えは子どもの中にある」からです。私たちの保育も計画を立てるときに、まず、一番大切なのはその時の子どもの育とうとしていることは何かを見ます。そこに合わせて計画を立てていかないと大人の都合保育になってしまうからです。
ところが母と子は一心同体の近い存在。近すぎるからこそ、子どものいいところもよくないところも見えなくなることがあります。そして冷静に関わっていられなくなったりすることもあるでしょう。何年か前に、あるお母さんから「家で毎日毎日こどもたちが兄弟げんかをするので、それを止めたり解決することに疲れきってしまいました。」という相談がありました。兄弟姉妹は遠慮なく思いをぶつけ合うことのできる相手ですから、自分たちで円満解決するのを待っていてもなかなかけんかは止まらない。最後は下の子が泣いて上の子を叱る・・・といったことが多かったり・・・。そして上の子を叱ってしまった自分 を反省したり・・・。ほんと疲れちゃいますよね。
以前、園庭でサッカーをしていた年長組の子どもたちがなにやら7.8人集まってもめていました。「まだはじまってへんやろ」といきなりゴールを入れられたチームが、いつ始まったのかわからないうちに点を入れられたことを怒っています。点を入れたチームは「「いくぞ」って言ってからキックオフした」。「聞こえなかった」。「言った」。「ずるい」。「もんくいうな」・・・。の言い合いをしていました。どうするかなと思ってしばらく見ていたら、A君が「みんなが試合が始まったってわかってなかったらサッカーにならへんやろ。最初からやりなおそ。」とボールを真ん中に持っていきました。そしてみんなはそれにつられて最初から試合開始となりました。その言い出したA君はまさしく「毎日兄弟げんか」で悩んでいたお母さんのお子さんだったのです。毎日小学生のお兄ちゃんと兄弟げんかをしながら、どうやったらうまく関係性を作れるかを考えてきたのでしょうね。
子どもは毎日が生きていくことの練習。子どもが育とうとしていることを肯定的にとらえることは難しいときもありますが、少し離れると見えてくる。けんかがいいとは言いませんが、人間関係の練習しているんだと思えば、「しばらくいいか」と思えたりしますよね。あまりにエキサイトしてきたら、途中でジュースを入れてクールダウンさせたり、両成敗して反省させたり・・・。でもきっと子どもは育ってますよ。